Blender でスタジオ風のライティングを試してみる

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完成したレンダリングPhotoshop でレタッチ)

Blender で HDRI 一発のライティングにそろそろ飽きてきたので,スタジオ風のクラムシェルライティングをセットアップしてみた.テクニックの概要については玉ちゃんのライティング話 第17回 バンクライト2灯でクラムシェルに9割方書いてあるので,付け加えることはあまりない.以下はレンダリング特有の事情についての簡単なメモ.

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シーンのセットアップ.物体の後ろ・下に見えている四角いポリゴンは黒締め用の板ポリゴン.

クラムシェルの角度

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今回はライト全体を45°回転させた.カメラからみて左側のライトが背景紙を貫通しているが,見た目に影響がなかったのでそのままレンダリングした.

反射回数を減らすための改変

Cycles では,反射回数を減らしたぶんだけ高速化が図れる.たとえば,背景紙を Diffuse BRDF(拡散反射)から Emission(発光)にした結果,今回はレンダリングが2倍程度速くなった.これは,レイトレーシングにおける反射の計算が背景紙に当たったところで打ち切られたためと考えられる.

リアライトを2灯,被写体を挟むように設置する.通常は光量の比を 4:1 程度に設定するところだが,背景紙を 0.5W/m2 で光らせたため,様子を見ながら最終的に光量を 10 : 1 (5W : 0.5W) に設定した.

Blender 版の「黒締め」

何もしないとシルバーの筐体の底面と左側面の色の差がはっきりしないので,「黒締め」を使ってみることにした.「黒締め」については,玉ちゃんのライティング話 第10回 透明物の透過光撮影と黒締めを参照.

Cycles は物理ベースレンダリングエンジンなので,スタジオ撮影のテクニックは概ね Cycles でも有効である(例外は C-PL フィルタくらいだろう:これはマテリアルの設定を直接操作してしまえばよい).

スタジオ撮影における「黒締め」は,物体の外側に黒ラシャ紙を写し込んで photoshop で消すのが一般的である.Cycles でも同じように行ってもよいが,Cycles の場合はカメラからのみ見えない物体,影を落とさない物体などが簡単に作れるので,Photoshop による後処理は少なくて済む.

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左:黒締めあり,右:黒締めなし.中央のシルバーの筐体の3面の色の差,グレーの筐体の影がはっきりしたのがわかる

今回は黒締めを行ったことで,すべての筐体で3面を異なる明るさにすることができた.

マスクを作る

オブジェクトを一々切り抜くのは面倒なので,レンダラからマスクを出力させると便利である.以前の Blender では ID Mask を使っていたが,これはアンチエイリアスの品質に問題があった.最新の Blender では Cryptomatte を使うとよい.操作がやや複雑なので,詳しくはドキュメントを参照:Cryptomatte — Blender Manual