キーボードの振動を測ってみる
はじめに
キーボードの音を測ることはよく行われているが,振動を測った例はあまり見ない(というのは検索の怠慢で,reddit の keyboard science でも見ればあるかもしれない).ともかく,秋月で買った加速度計ユニットが余っていたのでキーボードに設置してタイピングしてみた.
セットアップ
今回使用したのは秋月のKXR94-2050モジュール.測定範囲は ±2G だが,水平に置いた場合は重力があるので実質 1 G の振幅までしか測れない.これではちょっと強くタイピングするとクリッピングしてしまう.仕方がないので,タオルの上に垂直に立ててタイピングした.測定治具のモデルは Github のリポジトリにある.
結果
1 V = 1 G. トリガがかかった時間を 0 ms としてプロットした.アクリルサンドイッチのほうが振動が大きいことがわかる.底打ち前の振動(-5 ms 付近)は恐らくキーキャップに指が触れた瞬間だろう.
議論
いいかげんな測定ではあるが,アクリルサンドイッチはやはり大きく振動していることがわかる.底面全体にフォームを貼って底全体で支えるか,振動の腹の位置にゴム足を置くことで振動の大きさを改善できる可能性はある.
一方で Polaris は振動の減衰が大きいと予想したが,今回の結果からは判断できない.振動の減衰特性について知るためには,キーを叩くのではなく,プレートを直接叩いたほうが良さそうに見える.
今後の課題
雑なプロトタイプなので課題だらけである.
測定の簡便化
現在はアナログ出力の加速度計を使用しており,オシロスコープがないと値が読めない.自作キーボード界隈には Pro Micro が普及しているので,SPI 接続の加速度計があれば誰でも安価に値が読めて便利だと思われる.データをファイルに書き出すのは面倒なので,トリガがかかったら一定時間シリアルに値を出力する程度でよいだろう.
打鍵の標準化
手で打鍵するとどうしても不均一が生じるので,これも標準化したい.試しに手元にあったペンでキーボードを叩いてみたら,見事に高域が消えてしまった.硬いもので打鍵するとキーキャップの動きが拘束されるためだろうか.
振動の減衰について知るためならば,プレートを直接叩いたほうが良いかもしれない.
PCBマウント対応
現在の取付治具では,PCBマウントに対応できない.適当なスイッチに加速度計を接着するなどすれば対応できると思われる.
測定位置の考慮
現在は打鍵しないキースイッチの位置にセンサを置いている.場所により振動のしかたが異なる可能性があるので,センサを複数置いて測定することで打鍵感の均一さが測定できるかもしれない.