60% キーボードを作った
名前 (Sugi 6x) について
元々キーボードの脚を杉材で作ろうと計画していた(材料だけは買った)ことと,60%レイアウトより少し多いことによる.
コンセプト
デザイン作業もタイピングもできる携帯可能なキーボード.
デザイン作業適性
カーソルキーはHHKB準拠配置に加えて左 Fn + WASD にも割り当てた.これにより,マウス操作とキーボード操作で右手を忙しく往復することなく作業ができる.たとえば Lightroom を使用するとき,マウスカーソルを現像パラメータの上に置いて左手でカーソルキーを操作することができる.数値入力を多用する場合や,テンキーに重要なショートカットが割り当てられている場合に備え,右 Fn には Num Lock を割り当てた.
デザイン作業に使うため,見た目の地味さとさりげなさを最大限重視した外見としている.
モバイル適性
60%というコンパクトな形状*1と側面に配置した USB Type-C コネクタにより,ノートパソコンの上に置いて使用する場合でも楽に使用できる.
その他
- このブログで何度か言及した通り,スペースバーが特殊なサイズであるため,入手に難がある.既製品を鋸で切って貼り合わせるのが一番早い.方法や3Dファイル等は4uスペースバーのビルドログを参照.
- 今回は M2.5 のねじを使用したが,タップの入手が面倒なので次の版から M3 に改める予定.
*1:自キ界では60%でも大きいほうですが
2019年に始めたこと
昨年はいくつか新しいことを始めてみることにした.うまくいったことばかりではないものの,うまくいかないものは大体一月も保たないので,それ以上続いたことをうまくいったとみなして書くことにする.
英語
Financial Times (FT) を毎日読むのは一年続いた.FT は文章が平明なので,ノンネイティブが読むには丁度よい.記事を Google Keep に要約するのを三ヶ月くらい続けたあたりで a とか the の意味が見えるようになってきた.要約は続かなかったが,要約に疲れる頃にはだいたい記事を最後まで読み通せるようになっていた.今年はプライバシーやデータ資本主義,テックジャイアントへの規制の議論に興味をもって読んだ.
一方で The New York Times (NYT) を読むのは相変わらず習慣になっていない.扱う内容に FT ほど興味がもてないうえ,文章も FT より持って回った書き方をしているせいだろうか.
カメラ
厳密には新しいことではなく,10年前に K-7 と DA35 Limited を振り回していたことがある.身のまわりで数人カメラを買っていたので,それに引きずられるようにしてカメラ趣味を再開した.春頃に GR III を買い,ほとんどの撮影をそれでこなしていたが,標準-中望遠の画角が欲しくなったので fp を追加した.
カメラを趣味だと思うと,普段は30点だがここぞというときに120点を叩き出す機材が選択肢に入ってくる.GR も FA77 も基本的にはそういった部類のものだといえる.
GR は毎日持ち歩かないと意味のないカメラなので,常時ポケットに突っ込んである.起動も速いし,あとはオートフォーカスがまともなら言うことはない.これが RX100 系だと,万能だが分厚くておさまりが悪く,画質も GR には及ばない.迷ったときはピーク性能を重視すべきだと考えて GR にした.
Julia
現在関わっている研究プロジェクトでは Python が推奨されているが,遅いので速度が必要な部分を Julia で書くことにした.Python にも速いライブラリはあるが,一般にそれらは C で書かれており,書き換えや並列化が大変である.その点 Julia はライブラリの改造が楽で,簡単に並列化できるので都合がよかった.
一方で,まだ新しい言語なので仕様が不安定であり,また Python ほどのエコシステムの厚みがないのでこれ一本で頑張っていくにはつらい部分もある.可能性は感じるので,導入を主張したぶんの責任をとる程度には勉強していきたい.
Sigma fp を買った
概要
Sigma fp を買った.買うときに検討した条件は次のとおり.
- PENTAX の FA77mm f1.8 Limited を本来の画角で使いたい
- 毎日持ち歩きたいので,コンパクトなものがよい
- 見た目が薄っぺらくないものがよい
- 将来性を考えてミラーレスにしたい
万人におすすめできるわけではないが,合理的に考えればα7IIIを買うべきところをこちらにダイバートさせるだけの独特な魅力があったのも事実.
それにしても,カメラが売れていないらしい.顕示的消費と気軽な撮影の座をすっかりスマホとインスタグラムに明け渡してしまったということだろう.カメラを買っても写真は上手くならないが,スマホを新しくすれば良い画像が作れるわけで,むべなるかな.
使用感
一月ほど使ってみた感想.基本的には発展途上のシステムで,完成された安心感というようなものはない.かなり我慢をして使うことになる.もし本体を売却して別の機種に乗り換えるとしたら,静止画撮影におけるローリングシャッターの強さが一番の理由になるだろうと思う.
手元にあるレンズは 45mm f2.8 DG DN と FA 77mm f1.8 Limited. 後者はマウントアダプタ経由なのでマニュアルフォーカスかつ絞り込み測光になる.広角側は GR III があり,非常に満足しているのでよほどのことがない限り買い足さないだろう.
Pros
- コンパクト.
- SDカードでも FullHD 12bit Cinema DNGが撮れる.
- レンズキットの 45mm f2.8 DG DN が期待していた以上に良い.
- 本体がいかにもモダンデザインという感じで好感が持てる.
- 静止画モードでも波形表示ができる.使ってみると案外便利.
Cons
- 静止画でローリングシャッタが強く出る.
- 手ぶれ補正がセンサシフト式ではないので,何も考えずに構図に集中するというわけにはいかない.
- EVFもチルトディスプレイもない.AFレンズならそこまで困らないが,MFレンズとの組み合わせでは不便なことがある.ビューファインダーの見え味は良いが,かさばって使いづらい.
- UIは発展途上感がある.
- TAvモード(絞りとシャッタスピード,露出補正からISO感度を自動で変更してくれる機能)がない.せっかくデジタルで撮っているのだからそれくらい装備しておいてほしい.
- GR III と比べてタッチパネルやUIの反応が鈍い.
- ビューファインダーがすばやく取り外せないわりに,フォーカス移動にデフォルトでは2手必要.
マウントアダプタとFA77
FA77 を Sigma fp で使う場合,マウントアダプタが必要.当初中国メーカーの安いアダプタを使っていたが,絞り環と混同しやすい形のローレットが刻んであり,手の感触でわからず不便だなあと思っていたら Novoflex のアダプタ LET/PENT が一瞬安くなったので購入.たぶんアルゴリズムで値付けをしているのだろうが,時々変な値動きをする.
FA77 は古いレンズであるせいか,軸上色収差によるフリンジはかなりひどい.Nikon Z マウントの 85mm はかなり良いらしいので,システムごとそっちでも良かったかなと思うこともあるが,たまにこういう油絵みたいなボケ方の写真が撮れると PENTAX なかなかやるなという気分になる.
せっかくフォーカスリングとフォーカシング機構が機械的に直結されたボケのきれいなレンズがあるので,そのうち三脚に載せて映像に使ってみたい.
自作キーボードの仮組み
必要なパーツを半分ほど注文し,組んでみたところでスペーサの位置を間違えて設計していたことがわかった.元々スペーサは過剰ぎみに作ってあるので一本抜いたところで問題ない.とはいえ,間違いのある設計でアルミケースを発注する気にもならなかったので,一旦仮でアクリルサンドイッチケースの形に組んだ.
Pro Micro の位置取り
Pro Micro の位置取りにはいろいろな流派があるが,単純に縦置きすることにした.この置き方により,60%キーボードの利点である奥行きの短さを保ったまま,ケーブルのルーティングに自由度が生まれる.ついでに,いかにもな自作感を演出することもできる.気に入ったので,この配置でテンキーパッドなども作ってみようかと思った.
トッププレートへのねじ切り
スイッチプレートにM2.5のタップをたて,底面からスイッチプレートに向けて12mmのねじで留めている.これにより,上から見たときにネジ頭が見えない構造が実現できると考えたが,実際はそもそもキーキャップの陰になってほとんど見えないのでどうでも良かった.結局,ナット分のスペースが節約できた程度である.
LEDからの光漏れを減らす
自作キーボードといえば明るく光る LED である.小型のキーボードではひとつのキーに複数の機能を割り当てる(レイヤ)ことが多く,現在の状態を表示したいという要請はそれなりにある.
本機では透明のスイッチを採用したので,何も考えずにLEDを取り付けると盛大にスイッチが光ってしまう.抑制のきいたデザインにしたかったので,光る部分を最小限におさえたい.そこで,次のような構造を考えた.
布の上に乗っている白いパーツはライトパイプ*1である.手前にある黒いパーツは,光漏れの起こりそうな箇所に熱収縮チューブを被せた状態.
*1:全長が短いことと,3Dプリントを使用したことで実際にはパイプというより拡散板としてはたらいているが,部品名称の慣例にしたがいライトパイプとする
キーボードのプレートが届いた
Laserboost でキーボードのプレートを注文した.翌々日くらいに出荷されて2週間くらいでバルセロナから手元に届く.
Laserboost は穴へのねじ切りを Web ページでは受け付けていないので,自分でねじ切りをすることにした.レーザーの寸法精度は +/-0.1 くらいだと仮定してレーザー下穴は Φ2.0 で注文した.
案の定輪郭は値段なりだったので,2.1 のドリルで穴をさらって M2.5 のタップをたてた.一般鋼材用のタップとミシン油で適当にやったら見事に歯がひとつ欠けてしまった.多少穴の見た目が悪くなったが,クリティカルな力のかかる部分ではないのでそこまで影響はない.
既存キーキャップに手を加える
4uのスペースバーを作る
4uのスペースバーは圧倒的に入手性が悪い.3Dプリントで作ってもよいが,摩耗性や手ざわり,色のマッチングを考えると既存のスペースバーを加工するほうが良さそうに思えたので,既存のキーキャップを切ってはぎ合わせることにした.
入手しやすいエポキシ接着剤は半透明なものが多い.これは,はみ出しがバレづらいかわりに,隙間が目立ってしまうので,色をつけることにした.顔料を粉で取り寄せるのは面倒なので,ホルベインのソフトパステルを使うことにする.
なお,実際に折って試したところ,エポキシでは手で簡単に折れる程度の接着強度しか出ない.エポキシは隙間埋めだと割り切って,裏からステムの接着と強度保持を兼ねた部品を接着することにした.これは DMM ナイロン3Dプリントを利用して出力する.ナイロンにはエポキシが効かないので,セメダインのスーパーXで接着する予定.接着面が 39 x 11 mm あるので恐らく大丈夫だと思われる.
もし上記がうまくいかなかったら,おとなしくスペースバーを 3u に設計変更する予定.手元のキーボードのすり切れ方をみるに,3uくらいあれば最低限自分の使う範囲をカバーできる.
背の低い Fn キーを作る
Massdrop x Matt3o /dev/tty keycap の最下段がやや高くて気に入らないので,より低いキーで代替しようと考えた.キートップのサイズが近いのは XDA だが,XDAは /dev/tty keycap と比べると (1)下半分が膨れており,(2)上面と側面の境目のエッジが鋭い.これらをカッターやヤスリで削って視覚的な印象を揃えられないか検討してみたところ,案外いけそうだということがわかった.薄くなることで音が多少高くなってしまうが,気になったらレジンでも詰めればよさそうだ.
自作キーボードの外観を考える
前回記事で書いたキーボードの外観について,加工性のめどが立ったので,より精密にCGを起こしてみた.現時点で問題点が2つ残っている:
4uのスペースバーの入手.SA Profile なら Pimp my keyboard にあるが,レンダリングのとおりスペースバーは低くしたい.既存のスペースバーを3分割して接着する(または2分割し,中央に軸を3Dプリント等で貼り付ける)ことが考えられるが,接着がうまくいくか不明.色は揃えたい.最悪木製スペースバーとかでごまかす手もあるが,本体のデザインに対して派手すぎるようにも思われる.
木材の種類.最初は杉の圧密材を使うことも検討したが,個人向けに売っているところが見当たらない.フローリング材を切って使うことも考えたが,巨大なものをこれだけのために家に置くのもためらわれる.杉に限定せず,イチイなども視野に入れて柾目の材を探してくる方針にしたい.
名前は Sugi 66 にするつもり.材料の都合によっては Ichii 66 になるかもしれない.