デッサンを始めてみた

デッサンを始めてみた.以前造形基礎という名前で半期の授業を受けたことはあるが,美大出ではないし,予備校に通った経験もない.自分が属している複数のコミュニティで同時多発的に人々が絵を描き始めたので,おそらく人々が禁足に飽きているのだろう.鉛筆で身のまわりのものを描き始めた人もあれば,「脳の右側で描け」が熱心に布教されているコミュニティもあり,といった具合である(なぜか自作キーボードコミュニティの一部で絵が流行っている).

デッサンをする場合,照明を決め,椅子の位置をテープでメモして頭の位置を固定し,測り棒(鉛筆で代用することも多い)で長さや角度を測りと,ひたすら自分がカメラ部品になったような動作を要求される.目の前にある物体を忠実に複製するための手法なので,デッサンができたからといって想像上の物体を同じように描けるとは限らない(なぜならデッサンは光の振舞いを考えずに描ける)し,特定の様式のイラストがすぐに描けるようになるとも限らない.どちらかといえば,直接的には絵画よりもアンセル・アダムスのゾーンシステムに近い技術のように思う.

この意味では,鉛筆と紙というメディアを用いる鉛筆画と,現実の射影を追求するデッサンという単語は区別して使ったほうがよさそうに思える.たとえば前者では,イラストレーションにおいてよくみられる大域的な明るさ構造の捨象が許されるが,デッサンではそれは単にヴァルールの狂いと片付けられてしまう.

iPad Pro は初代から数えて3台目だが(このデバイスは描き味が良くて大好きだ),それでもやはり細部の描き込みは鉛筆のほうがはるかに信頼できるので,まずは鉛筆で描いてみることにした.

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一方で最終的な目標はデジタルで明暗をとらえた絵を描くことなので,並行して ProCreate でざっくり明暗をとる練習も始めた.太めの鉛筆を模したブラシでざっくりと下描きしたあと,半透明での描画はできるだけ使わずに色を一度作ってから不透明なブラシで塗るようにした.

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キッチンが整理されていないので,適当に椅子に腰掛けてそのへんを眺めると画題が転がっている

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これは松屋式ドリッパーだが,朝になって照明や椅子の位置が変化したので明暗の関係は上の鉛筆デッサンとは異なる

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ワインの瓶.少していねいに描き込んでみた.指の色を50%グレイにして色を取ったらうまくいくかと思って試してみたが,かなり暗くなってしまった.おそらく iPad の画面が明るすぎたことによるので,単純にレベル補正で正規化すれば解決する問題ともいえそう.明暗の矛盾はだいぶ減らせたように思う.