自作キーボードの仮組み
必要なパーツを半分ほど注文し,組んでみたところでスペーサの位置を間違えて設計していたことがわかった.元々スペーサは過剰ぎみに作ってあるので一本抜いたところで問題ない.とはいえ,間違いのある設計でアルミケースを発注する気にもならなかったので,一旦仮でアクリルサンドイッチケースの形に組んだ.
Pro Micro の位置取り
Pro Micro の位置取りにはいろいろな流派があるが,単純に縦置きすることにした.この置き方により,60%キーボードの利点である奥行きの短さを保ったまま,ケーブルのルーティングに自由度が生まれる.ついでに,いかにもな自作感を演出することもできる.気に入ったので,この配置でテンキーパッドなども作ってみようかと思った.
トッププレートへのねじ切り
スイッチプレートにM2.5のタップをたて,底面からスイッチプレートに向けて12mmのねじで留めている.これにより,上から見たときにネジ頭が見えない構造が実現できると考えたが,実際はそもそもキーキャップの陰になってほとんど見えないのでどうでも良かった.結局,ナット分のスペースが節約できた程度である.
LEDからの光漏れを減らす
自作キーボードといえば明るく光る LED である.小型のキーボードではひとつのキーに複数の機能を割り当てる(レイヤ)ことが多く,現在の状態を表示したいという要請はそれなりにある.
本機では透明のスイッチを採用したので,何も考えずにLEDを取り付けると盛大にスイッチが光ってしまう.抑制のきいたデザインにしたかったので,光る部分を最小限におさえたい.そこで,次のような構造を考えた.
布の上に乗っている白いパーツはライトパイプ*1である.手前にある黒いパーツは,光漏れの起こりそうな箇所に熱収縮チューブを被せた状態.
*1:全長が短いことと,3Dプリントを使用したことで実際にはパイプというより拡散板としてはたらいているが,部品名称の慣例にしたがいライトパイプとする
キーボードのプレートが届いた
Laserboost でキーボードのプレートを注文した.翌々日くらいに出荷されて2週間くらいでバルセロナから手元に届く.
Laserboost は穴へのねじ切りを Web ページでは受け付けていないので,自分でねじ切りをすることにした.レーザーの寸法精度は +/-0.1 くらいだと仮定してレーザー下穴は Φ2.0 で注文した.
案の定輪郭は値段なりだったので,2.1 のドリルで穴をさらって M2.5 のタップをたてた.一般鋼材用のタップとミシン油で適当にやったら見事に歯がひとつ欠けてしまった.多少穴の見た目が悪くなったが,クリティカルな力のかかる部分ではないのでそこまで影響はない.
既存キーキャップに手を加える
4uのスペースバーを作る
4uのスペースバーは圧倒的に入手性が悪い.3Dプリントで作ってもよいが,摩耗性や手ざわり,色のマッチングを考えると既存のスペースバーを加工するほうが良さそうに思えたので,既存のキーキャップを切ってはぎ合わせることにした.
入手しやすいエポキシ接着剤は半透明なものが多い.これは,はみ出しがバレづらいかわりに,隙間が目立ってしまうので,色をつけることにした.顔料を粉で取り寄せるのは面倒なので,ホルベインのソフトパステルを使うことにする.
なお,実際に折って試したところ,エポキシでは手で簡単に折れる程度の接着強度しか出ない.エポキシは隙間埋めだと割り切って,裏からステムの接着と強度保持を兼ねた部品を接着することにした.これは DMM ナイロン3Dプリントを利用して出力する.ナイロンにはエポキシが効かないので,セメダインのスーパーXで接着する予定.接着面が 39 x 11 mm あるので恐らく大丈夫だと思われる.
もし上記がうまくいかなかったら,おとなしくスペースバーを 3u に設計変更する予定.手元のキーボードのすり切れ方をみるに,3uくらいあれば最低限自分の使う範囲をカバーできる.
背の低い Fn キーを作る
Massdrop x Matt3o /dev/tty keycap の最下段がやや高くて気に入らないので,より低いキーで代替しようと考えた.キートップのサイズが近いのは XDA だが,XDAは /dev/tty keycap と比べると (1)下半分が膨れており,(2)上面と側面の境目のエッジが鋭い.これらをカッターやヤスリで削って視覚的な印象を揃えられないか検討してみたところ,案外いけそうだということがわかった.薄くなることで音が多少高くなってしまうが,気になったらレジンでも詰めればよさそうだ.
自作キーボードの外観を考える
前回記事で書いたキーボードの外観について,加工性のめどが立ったので,より精密にCGを起こしてみた.現時点で問題点が2つ残っている:
4uのスペースバーの入手.SA Profile なら Pimp my keyboard にあるが,レンダリングのとおりスペースバーは低くしたい.既存のスペースバーを3分割して接着する(または2分割し,中央に軸を3Dプリント等で貼り付ける)ことが考えられるが,接着がうまくいくか不明.色は揃えたい.最悪木製スペースバーとかでごまかす手もあるが,本体のデザインに対して派手すぎるようにも思われる.
木材の種類.最初は杉の圧密材を使うことも検討したが,個人向けに売っているところが見当たらない.フローリング材を切って使うことも考えたが,巨大なものをこれだけのために家に置くのもためらわれる.杉に限定せず,イチイなども視野に入れて柾目の材を探してくる方針にしたい.
名前は Sugi 66 にするつもり.材料の都合によっては Ichii 66 になるかもしれない.
QMK Firmware で Hello World をした
2019年6月現在,自作キーボードを一番手っ取り早く始めようとすると QMK Firmware + Pro Micro を使うことになる.容量節約のためか,マクロの山なので何がどこにあるかを把握するのがとにかく大変.
方針:見た目を圧倒的に重視
さらっとした見た目の60%キーボードを作りたい.60%の基板ならいくらでもあるが,世の中の基板はおおむね (1) マイコンとハードが密結合か,または (2) 汎用の Pro Micro を使うのでサイズが大きくなりがちである.マイコンとハードを疎結合にし,かつサイズを小さくおさめるためには,基板と回路とケースを全て設計する必要がありそう.考えた結果,IOエキスパンダで組んだキーマトリクスをコンパクトな Pro Micro 互換基板からI2CなりSPIなりで読むことにした.
脚の部分には特に何も入れない予定なので,好きに形が作れる.背中を美しく見せるため,ケーブルは左側面から出すつもり.触って痛かろうが気にせず作っていきたい.好みにしたがってスギ柾目のテクスチャを貼ってはみたものの,実際に作ったら数日で角が摩耗してしまいそうなので,何か別のものにする予定.
回路を設計する
秋葉原で買え,かつ5Vで動く部品として MCP23017 を使うことにした.I2Cのプルアップには,そのへんに転がっていた 10kΩ を2本並列にして 5kΩ を使った.波形を見ても100kHzなら鈍っていなかったので,まあよいことにする.
QMK Firmware を書き換える
QMK Firmware のリファレンスには,キーマトリクスが記載されていない.パフォーマンスにとって重要な部分なので自分でコードを読むか,公式 Discord で聞けと書いてある.面倒なので Ergo 42, Ergodox など分離型キーボードのソースを読んだらどれも matrix.c をコピーしてきて書き換えているようなので,そのようにした.I2Cのドライバは Peter Fleury 氏のものを借りた.
動いた
キーボードの回路がブレッドボード上で動いたので実質完成 pic.twitter.com/P3zQ6xoPdE
— マイナスイオン回収機 (@lunar0) 2019年7月1日
遊舎工房のキースイッチテスター
キーキャップを買った以外,1年くらいほぼ何もしていなかった自作キーボードの進捗.遊舎工房のキースイッチテスターを購入して検討した結果,キースイッチは Zilent*1 62g に Krytox GPL 205 を薄く塗布するのがよさそうだという結論に達した.
キースイッチテスターを買う理由
遊舎工房は秋葉原に実店舗があり,店頭でキースイッチの触感を試すことができる.しかし,基本的には立ったまま触るので,キースイッチを押す力に腕の重さが乗り,実際の使用シーンに適したものよりも重いスイッチを選ぶバイアスがかかる可能性がある.キースイッチテスターを購入すると,実際の使用シーンに即した姿勢でキースイッチを試せるので,先述のバイアスを除去できることが期待される.
店頭でスイッチを試す
店頭でスイッチに目星をつけた.テスターは通販でのみ扱いがあるので,何らかの手段でキースイッチの銘柄をメモする必要がある.
- Zealios V2, Zilent V2
- 各種リニア・静音系スイッチ
- Novelkeys Cream
IK■AスイッチLinjär
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キースイッチテスターは穴がゆるめに作られているので,スイッチの差し替えは簡単にできる.キーキャップの形状や厚み,傾き,剛性感,椅子の高さなどによってもトータルでの触感が変わる.作るキーボードが決まっていなければ,現在使っているキーボードの横になるべく同じ高さになるように置く.作るキーボードが決まっていれば,それと同じ姿勢になるように治具を作って固定するのがよい.
試してみた結果,Zilent V2 の 62g か 65g が良さそうだったので,それぞれ 4個ずつ発注して人差し指から小指までを同時に試せる状態にした.ついでに,潤滑剤を塗布すると静かになるかもしれないという望みを込めて Zealios V2 の 62g, 65g も購入.この状態で試してみた結果,Zilent V2 62g が自分に一番合っていそうだという感想になった.
次は QMK Firmware と Pro Micro で Hello World をする予定.
*1:うるさそうな名前だが,打鍵音は静か