GR III

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今まで使っていた RX100M3 がいい加減くたびれてきたのと,画質に不満を感じ始めた(霞のかかったような感じは現像でも救えないことがある)ので,ちょうどよいタイミングで発売になった GR III を買うことにした.個人的にはレフ機に技術的優位はほとんどないと思っているが,さりとてPENTAXがモダンな設計のマウントでミラーレスを出すのかどうかよくわからないし,どうやらUXはかなり良さそうだということで購入を決めた.

世評ではストリートスナップに最適とのことだけれど,これだけレンズの性能がいいと(+値段が高いので)どうしても構えてじっくりと撮りたくなってしまう.

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春に咲く花は細かいものの寄せ集めといった風情があってかわいらしい

光量が十分あればすばらしい体験が得られるが,暗いとAFが迷う云々は予想よりかなりひどいといってよく,2019年発売のカメラだとはにわかに信じがたい.僕の場合はそもそも夜間に写真をあまり撮らないのでどうでもよいが,気にする人が予約注文していたら怒り心頭だろうとも思う.

広角単焦点の楽しさは街自体の魅力にかなり依存するところがあり,京都在住各位がうらやましくなる.全てをなげうって京都に移住できない境遇なのが悔やまれる.

2018年に買って良かったガジェット3選

iPad Pro 12.9 Cellular (第三世代)一式

以前使っていた iPad Pro は 10.5 インチ Wi-Fi モデルで,次のような欠点がありました.

  • 絵を描いていると画面の狭さに不満がある
  • 一々携帯電話に繋げてテザリングするのが面倒で,隙間時間に取り出さなくなる.結果,携帯電話の狭い画面を覗き込むことになる
  • 使いたいときに Apple Pencil が充電されていない

画面サイズを除いて,以上の欠点がほぼすべて解消されました.携帯性は筋肉と気合で解決することにしましたが,今のところ順調です.Apple Pencil の描き心地にも特に違和感はありません.

Financial Times

Financial Times (FT) は経済紙のひとつで,一般的には経営・金融などの方面で読まれているものとされます.とはいえ,世の中の興味や流行,動向をざっくり眺めるという点において,技術者が読んでも十分に価値あるものだといえるでしょう.私は New York Times (NYT) も読んでいますが,FT は NYT よりも英語表現が簡潔・平易です.NYT を読んでいると毎日よく知らない形容詞が出てくるので辞書が手放せません.どちらか1つだけ取るならFTだろうと思われます.

とはいえ,アプリの画面遷移がネイティブっぽくなく,体験がやや悪いのはなんとかしてほしいところです.この点だけは NYT に軍配が上がります.

Things

体験が良い ToDo アプリです.単にそれだけですが Apple 帝国の中にいる限りにおいて非常に快適に生活できます.

Firebox & Firebox nano

Firebox と Firebox nano を購入して数回使ってみた.どちらもネイチャーストーブとよばれるカテゴリに属し,ワンタッチで組み立てられるのが特徴.微妙に用途が被っているものを2つ買うのもなんだが,デザインの勉強代であり,必要経費だと思うことにする.だいたいキャンプに行くと刃物と火に夢中になって写真を撮り忘れるので,自宅で再現した写真しかない.

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Firebox nano(左),Firebox(右)

どちらも燃料をくべるための穴が2面にあいており,細く割った薪を差し込んで燃やすことができる.薪が燃えて短くなったら内側へ押し込むことで燃焼を持続させる.また,組み立てがワンタッチで済み,思い立ったらすぐ火を起こせるのも共通の利点.うまく使えば 500 mL くらいの湯が沸かせる.

Firebox

荷物に余裕があり,どちらか1つだけ持っていくとしたら Firebox だと思われる.穴の高さは 19 mm で,それなりの太さの薪をくべられるので燃焼が安定する.普通に燃えて普通に使えるので,正直なところ書くことが思い浮かばない.買って損はない

Firebox nano

荷物に余裕がないがどうしても焚火がしたいとき,あるいは追加で数分だけ火が必要になったとき,朝食の調理をするときなどに便利.小さいので,燃えるのも消えるのもすべてが早い.軽くて不安定など,欠点はそれなりにあるが,小回りがきいてカワイイのですべてが許せるチタニウム製のものもあるそうだが,僕の用途では 60g の軽量化に価値を感じなかったのでステンレスのほうにした.登山などする場合はチタニウム製がよいかもしれない.

FRENZ 2018 出展作 'Illum' 制作メモ

新作映像上映イベント FRENZ 2018 に作品を出展しました.観覧いただいたみなさま,ありがとうございました.以下,制作メモです.


着想

今回の作品 'Illum' では,質感と重さのある光の表現を試みた.削れるものは可能なかぎり削らないとコンセプトが弱まるので,イージングも動きも付けていない.

抽象的な作品は要素数で押せないぶん,質感のような別の要素を活用するのはひとつの方法である.抽象画の重要な作家であるパウル・クレーについて,寺門 (1998) *1は次のように述べている.

まず「素描の厳格な輪郭線をほぐす努力」の結果として彼が到達したのは,「転写」によって線の硬さを緩和することであり,またそれによって生じた豊かな表情の線質を殺さずに彩色を施すことだった.

ここでいう「転写」とは,現代でいえばカーボンコピーのようなものである.これは,入力の不完全な再現が質感を付与すると見ることもできる.

単に映像に劣化を与える手法は,擦れやグリッチヴィネットなどで普及しきっている.そこで,一旦映像という枠を外し,仮想的な照明とその動きを表現するという方針を立てた.会場のプロジェクタは非常に明るく,問題になりがちな緑色被り*2や彩度低下*3もほとんどないので,この類のコンセプトにとってはよい環境だった.

仮想的な照明の組み合わせとして映像を表現することは,光を透明水彩のように使うことにもつながる.透明水彩を特徴づけるのは重色技法であり,それを光に読み換えると,照明の同時点灯が最も自然な類推だと考えられる.

制作

線描に質感を与える

線の描画は,ベクタスキャンディスプレイの簡易なシミュレーションを Processing で行っている*4.ベクタスキャンディスプレイとは,簡単にいえばオシロスコープのXYモードのようなもので,ピクセルを左上から順番に描画するのではなく,輝点を画面上で自由に動かして形状を描画するものである.

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理想的な条件でシミュレーションを行っても,入力の完全な再現が行われるだけで質感は付かない.そこで,この手のものに典型的な欠陥として,輝点の動作に遅れ要素を入れ*5,入力図形の再現性を下げることにする.系の時定数により,図形の崩れ方は下図のように変化する.

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この処理は,四角形の描画だけに適用した.全ての要素に適用すると画面が崩れすぎるし,そもそもベクタスキャンディスプレイでは光の面を作れないので,光の面にこのタイプの歪みを適用するのはモデルとして正しくない.

光に質感を与える

この作業では Blender + Cycles を使用した.

  • 板ポリゴンにテクスチャを貼ったライト(つまり,プロジェクタ)を当てている.ライトの光軸から外れた部分が暗くなり,単なるフラットな図形とは違った質感が得られる.
  • 各図形要素(四角形,縦線,面)を一つのライトから投影しただけでは After Effects でエフェクトをかけるのと変わらないので,図形要素ごとにライトを割り当て,以下のように処理した.
    • ライトを全て異なる位置に置いている.
    • 各ライトは,微妙に異なる色に色被りさせている.
    • 各ライトにそれぞれ異なる量の倍率色収差・ボケを付けている.

レンダリング結果は以下のとおり.このライトの光軸は画面右上にあるので,光軸に近いピクセルほど明るく,また色収差は左下隅に大きく出る.なお,このライトはわずかに紫に色被りさせてある.

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Blender シーンの全体は以下スクリーンショットのとおり,素朴にモデリングした.Blender Cycles では Point Light の size を変化させることでボケの大きさを調整できる.

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キーフレームを打つ

制作段階では,このブログでも何度か登場している Vezér から OSC を経由して Processing にキーフレームを渡して描画させている.書き出し時にはフレームレートを安定させるため, Vezér からキーフレームを XMLレンダリングし,それを Processing で改めてパースしてオフラインレンダリングを行っている.

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制作環境

Processing
Java ベースのデジタルアート用言語.比較的古くからあるのでノウハウが蓄積されているが,一方で Java 特有のつらさも受け継いでいる.8bpc までしか扱えないが,初期段階ではプロトタイプが書きやすいので,油断しているといつのまにか目前に迫った締切に終われて最後までこれで書き切ることがよくある.今すぐダウンロー
Blender
OSSの統合3Dソフト.近年すごい速さで機能とコミュニティが成長している.他の3Dソフトに負けず劣らず操作が独特なのが難点だが,2.8でだいぶ改良されるらしい.
Vezér
OSC (Open Sound Control) や MIDI で他のソフトを制御するためのもの.

*1:http://www-art.aac.pref.aichi.jp/research/pdf/1998/apmoabulletin1998p7-32.pdf

*2:水銀灯を光源に使用したプロジェクタは緑に色被りする

*3:一部のデータプロジェクタでは,全白輝度を上げるために彩度が犠牲になる

*4:Processing では 8bpc の画像しか扱えないので画質が良くない.本当は 32bpc が扱える環境,たとえば OpenGL などで書くべきだったが,時間がなかった.前田地生許してくれ

*5:より直接的にいうと,ローパスフィルタ

NITECORE LA10 CRI 第一印象

小型ランタン NITECORE LA10 CRI を購入した.3000円を切っており,この手の商品には珍しく高演色性をうたっている製品.

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評価

第一印象

帰宅後ほぼこれの明かりのみで過ごしてみた.何がどこにあるか大体わかっている環境なら十分使えるといった印象.安いので,複数設置すれば影が消えていいかもしれない.

Pros

  • 高演色性.このたぐいの製品ではあまりない.
  • 非常にコンパクト.スティック糊とほぼ同じサイズ.
  • それなりに明るい.目が慣れれば一番暗いモードで半径2mくらいは見える
  • ホヤを収納できるので,探し物をするときに懐中電灯のように使えなくもない.
  • 底面の磁石で鉄部に取りつけることができる.
  • 単三電池一本で動く.入手性が高い電池が使えるのはありがたい.

Cons

  • スイッチは頻繁なオンオフには向かない作り.やや接点の耐久性に不安を感じる.硬いシリコングリスを塗ったらフィーリング自体はかなり良くなった.

購入先

全光束にして6割ほど明るく (85 lm 対 135 lm) ,かわりに演色性の低い CRI の付かないモデルもある.

ロータリエンコーダのノブを作る

MJF方式の3Dプリントは独特の渋い質感があって良いので,ノブでもひとつ作ってみようかと思い立って試してみた.秋葉原あたりで売られているノブはどうも機能一辺倒で,多少滑ったりしても良いから見てくれのよいものが欲しいという向きにはあまり良いものがない.これは滑りやすいことを除けば案外よくできたものだと思う.もう少し鈍い光沢で,かつ角が立ってくれると良いのだが,あまり高望みするものでもないかもしれない.

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DMMに頼んだところ斜めに積層されてしまったので,微妙に歪んでいるように見えるのが気になっている.高い送料を我慢してShapewaysなどの積層方向指定サービスを使うか,DMM宛に見積を取ってみるかである.

まずはプロトタイプということで,側面にテーパのついていない円筒形と,膨らませた七角形を試してみた.円筒形のほうは何にでも馴染みそうだなと思うが,七角形のほうも粗く皮をむいた大根のような質感で捨てがたい.七角形のほうに関していえば,天面をフラットにしなくて良かったと思う.

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正七角形の各辺をその両端を通る円弧で置き換える.円弧の中心は辺の反対側にある頂点

寸法は直径14mm×高さ18mm.

なお,MJFの3Dプリントで何かしら作ろうと思ったのはそもそも以下のツイートがきっかけ.瓦や中国の古い石畳のような色合いに見えてとても良い.

MacBook Pro の問題雑記

ジェスチャが落ちる

MacBook を使っていると,3本指スワイプの戻る/進むジェスチャが効かなくなる問題が起こる.昔からあるバグだと記憶している. macOS には詳しくないのでデバッグをできるわけでもなく,検索するしか手がない.今回は Stack Exchange に回答のあるとおり,一旦スリープさせたら解決した.

pmset displaysleepnow; sleep 5; caffeinate -u -t 1

キーボード

MacBook のキーボードが時々効かなくなる問題については Apple が問題を認めて交換プログラムが開始されたとのことである.以前,間の悪いことに Mac を映像出力用の機材として使っているときにキーボードが壊れ,そのときは外付けキーボードで凌いだのを思い出した.OpenGL が deprecated になる問題を含め,手軽な映像演出用のパソコンといえば Mac みたいなのを考え直すべき時期なのかもしれない.高信頼性が必要なシステムはどうせ専用機材なのでどうでも良さそう.

ついでに Touch Bar については物理 Esc キーがないとそれなりに困る場面があるので,次のモデルでは物理 Esc だけ復活させてほしい.音量調整については Touch Bar のほうが便利であるように思われる.