Lr を用いた CGI のカラーグレーディングのためのメモ
概要
Adobe Lightroom を用いると,RAW を現像するように CGI のカラーグレーディングをすることが可能になる.最近では(恐らく Lr とエンジンを共有する)Lumetri が Premiere に搭載されたので,この手法の利点も少なくなりつつあるが,それでも Lr の軽快な非破壊操作とカタログ管理は魅力的である.本稿では,RAWの現像では普段考えない,CGI+Lr特有の問題についてメモしておく*1.
各種注意点
ファイル形式
32bpc TIFF とする. Lr の優秀なトーンマッピングエンジンの恩恵を受けるためにも,出力はぜひ 32bpc TIFF にしておきたい.
テクスチャ
普段通りでよいが,そのままで見た目が綺麗だなと感じるものは,わずかに彩度を落としたほうが適切な結果を得やすい.特に,カメラのデフォルト設定で撮影されたJPEG素材はかなり色が強調されているので,注意しなければならない.
このワークフローにかぎっていえば,Lrに渡す前から綺麗に見えるレンダリング結果は,多くの場合どぎつい見た目になる.
レンダラの設定
この方法では,イラディアンスキャッシュのムラがしばしば致命的な見た目の悪さを引き起こす.存在感が失われるのを覚悟の上でスムージングを強くかけて誤魔化すか,さもなければブルートフォース系のレンダラをメインで用いる*2のがよい.
デフォルトの見た目
32bpc TIFF をAdobe Lightroom に渡すと, Lr デフォルトのトーンマッピングが適用される.ややコントラストが上がり,ハイライトのクリップがやわらかになっている.
HSLスライダ
フォトリアルな風景のシーンでは,風景写真が得意とされるカメラメーカーに倣い,青系の彩度・輝度を落とすようにしている.RAWの現像では,このあたりはメーカーによってはカメラプロファイルで暗黙のうちに適用されているが,CGIではそういうことがないので,自ら設定する必要がある.
なお Lightroom の HSL スライダは Photoshop のものよりかなり効きが良く,また知覚的により適切な反応をするので,気軽に使ってよい.
カラーグレーディングの例
シャープな白黒写真.
白黒にし,ハイライトを下げるとともに,明瞭度を上げている.
フィルムライクな見た目.
明暗別色補正で色転びを表現し,赤系の彩度を下げる.さらに,トーンカーブ(ポイントカーブ)でハイライトを90%程度にクランプしている.